ものがたりが始まる

今日の成瀬望

「非属の才能」僕の大好きな本を紹介します。

僕の大好きな本を紹介します。
「非属の才能」山田玲司著 光文社新書
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最近は「中2賞」という賞を受賞し、カバーが以下のように
まき直しされているようです。

この本は僕にとって読むたびに、元気になれる本です。

孤独を感じたとき、希望を失ったときに効く
薬のような奇跡的な1冊。
こんな本と10代の中学生や高校生のころに出会ってればなぁと、
溜め息をつきたくなるような本です。

孤独を感じたら、自分にとってのヒーローやスターを
勝手に「心の師」、自分の理解者だと思えばいいというアドバイス。

僕も東京に行く前、大阪で本当に理解者がまわりにいなくて、
孤独だと思っていました。

寺山修司ならわかってくれる。
山田かまちならわかってくれる。
中村修二ならわかってくれる。
上田学園の人達ならわかってくれる。

当時そんなふうに勝手に心の中で思い込むことが、
自分の救いとなっていました。


自分で考えて行動する喜び。
新しいことに挑戦する喜び。
人生いろいろ、世の中いろいろ、の喜び。

「和をもって属さず」
人に協調しても、同調してはいけない。
こんなにストレートに自分の中の孤独と向き合ってくれる本は、
初めて出会いました。

大半の人は、「ただなんとなく有名だから」といった漠然とした理由で定置網にはまり、そのなかでうさぎ跳びをしながら、出る杭に嫉妬している。
ただ、そんな人ほど「真面目に一生懸命生きている」ように見えるから人生は恐ろしい。
自分で考えたり、行動することを怠けているにもかかわらず、だ。

僕は中学生のとき、コツコツ毎日勉強していて、
その理由は「自分が暇だから」と冷めた想いで
自分を分析していたことがあります。
たかが勉強を捨てて、自分の人生を賭けるほどのものも持てない男だ、と。

中学や高校時代にモテるのは、「教室の外」で派手にやっているタイプの男だし、少女漫画の主人公が好きになる男は、ほとんどが彼女を「ここではないどこか」へ連れ出してくれるキャラクターだ。
彼らは「こんな場所あったんだ」という場所に彼女を連れて行き、先生やクラスの優等生が絶対に言わないようなセリフを言う。

学校の中に何かある閉塞感から逃げ出したい。
みんな、うすうす同じようなことを感じている。
ドラゴンボールや、スラムダンクなど、
当時人気のマンガは、みんな常識外れでめちゃめちゃ強くて、
ちょっと生意気で、
ひとことで言うと、“いろんな何かを突破”してくれそうなキャラクター達が
人気だったと思います。
閉塞感のある現実を“突破してくれる”人が現れない。
そのイライラが強く溜まりすぎているからか、
犯罪者に共感するクラスメートも何人もいました。
時代的にもオウムサリンや、サカキバラ事件や、池田小学校など、
異常事件がたくさん起こっていた。
よく一緒につるんでいたクラスメートが悲惨な事件のニュース速報に
「マジおもろい」と言っていて、
なんて言えばいいのかわからなかったこともよくあります。

この世界は、参加するに値する意義のある世界か?
自分の人生は、生きるに値する人生か?

本などの中に出てくる理想の現実と比べれば、
大阪にいたころの僕は、全く冴えませんでした。

この「非属の才能」では、
人生の楽しみを増やしていくアドバイスとして、
一日に一度、何か「はじめてのこと」をすることをすすめています。
特に、話したことのない人に初めて話しかけてみることをすすめています。

「ぼくは話しかける」と寺山修司も言っていた。
寺山修司主催の劇団天井桟敷の演劇訓練の中には、
「知らない人に話しかける」
「電話帳の知らない人に電話して会話する」
というものも、やられる方にすればちょっと迷惑そうだが、
あったそうです。

中学校、高校。
非属の孤独を味わっていた僕は、話しかけたかった。
クラスの友達、女の子、先輩、後輩、先生。
自分の感じていることを聴いてもらいたかった。
感じていることを聴いて、じっくり話したかった。
テレビのお笑いよりも、誰かの噂話や悪口よりも、
もっとワクワクするようなことを話したかった。

夏休みにテントを持って旅をする計画とか、
ギターを始めるとか、何にワクワクするのかとか。
好きな本とかマンガとか、何が心に響いたのかとか。
好きな女の子と仲良くなるための作戦とか、
なぜその女の子が好きなのかとか。

仲のいい友達はもちろん、
話したことのない人ともそんなことをじっくり話したかった。

特に異性と話したり、一緒に帰ったりすると、
まわりの目がジロジロしたり、
ちょっとした事件のように扱われたりするのが嫌でした。
もっと“自然に”話したいと思っていました。

他にも嫌だったこと。
先生に「怒られるからおとなしくする」というのも嫌だった。
偏差値が掛かっているからと、3年生になったとたん授業態度が良くなるのが嫌だった。
いろんな場面で、ノリについていけなかった。
自分は孤立していると何度も思った。
そのことが嫌でした。

ブルーハーツのチェインギャングという歌で、
「仮面をつけて生きるのは息苦しくてしょうがない」
という歌詞があります。
当時は誰かと、仮面をはずしてじっくりと話がしたかった。

新しい世界の扉を開けたかったが、
それは個々の自分達の中にありました。

寺山修司に教わったこと。

人間関係はあるものではなく、つくるもの。
世界はあるものではなく、つくるもの。
人生はあるものではなく、つくるもの。

流されて、同調しているなら、抜け出して
「自分の人生」に参加すること。
「自分の人生」を演じ、行動すること。


この「非属の才能」ではラスト、
人間の幸せは「分かちあうこと」だと書かれています。
和をもって属さず、群れずにつながろう。
という呼びかけで本は終わります。

本当に多くの人に読んでもらいたいオススメの本です。
著者の山田玲司さんのブログhttp://zetuyaku.netもオススメです。


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